令和5年税制改正において、歴年贈与の制度内容が見直しされることが決まりました。
2024年1月以降の贈与から見直し内容が反映されることになりますので、これまで活用されてきた方や、今後の活用を検討している方については内容を理解しておくことが重要です。
★この記事を読んで分かること ・どのような制度見直しが行われるのか ・今後歴年贈与を検討する際に気を付けるべきポイントと上手な立ち回り方
そもそも歴年贈与の仕組みが知りたい!という方は、以下記事をご覧ください。
見直しの概要
![](https://ftopic-blog.com/wp-content/uploads/2023/03/歴年贈与(改正後).png)
![](https://ftopic-blog.com/wp-content/uploads/2023/03/歴年贈与(現行).png)
上図記載の通り、見直し内容は主に以下2点です。
【見直し内容】 ① 相続開始前に受けた贈与について、相続財産に加算する期間を 3年から7年に延長 ② 延長された4年間に受けた贈与について、総額100万円までは相続財産に 加算しない ※見直し内容が適用される時期:2024年1月1日以後の贈与から
特に①については、子供達へ時間をかけてコツコツ贈与をしようと考えていた方にとっては、特に影響の大きい見直しではないかと思います。
今後歴年贈与を検討する際に気を付けるべきポイントと上手な立ち回り方
前項の見直し概要を踏まえ、歴年贈与を検討する際に留意しておいた方が良い点を説明します。
結論を申し上げると、それは「歴年贈与を開始する時点の年齢」です。
以下、具体例を用いて説明します。
(想定ケース) ・Aさんは、子供への贈与による財産移転を計画中 ・2024年の1月1日に贈与を開始し、毎年非課税枠の110万円を子供へ移転する予定
上記ケースの場合で、もしAさんが2031年中に亡くなるとすると、相続財産への加算は以下のようになります。
・贈与の実施期間:2024年1月1日~2031年1月1日 (計8回分の贈与を実施)
・贈与の実施金額:110万円×8回分=880万円
・相続財産に足し戻される贈与金額
:2031年から7年間さかのぼるため、2024年からの贈与が対象となります。総額100万円までは
加算から除外されるので、880万円ー100万円=780万円が相続財産に足し戻されます。
このケースの場合ですと、贈与の実施期間がすべて相続発生前の7年間に含まれるため、
非課税で財産移転を図ろうとした計画がほぼ意味をなさないものとなってしまいます。。
(非課税で贈与できたのは実質100万円だけです。)
このような事態を防ぐには、歴年贈与を開始する時点の年齢に応じて、対応方法を考えることが重要となります。
たとえば、60歳以前の比較的若い年齢からの贈与を検討する場合であれば、たとえ7年間さかのぼられらたとしても、相応の期間は贈与で子供へ財産移転できる可能性が高いと考えられます。
(厚生労働省によると、日本人の平均寿命は2022年ベースで男性約80歳、女性約86歳です)
また、60歳超の年齢からの贈与を検討する場合については、1代飛ばして孫へ贈与することが有効な選択肢の1つになるかと思います。
孫へ贈与する場合であれば、これまで話題にしてきた「相続財産への足し戻し」の論点は基本的には生じませんので、高齢の方でも年齢を気にせずに贈与による財産移転効果が見込めます。
まとめ
・相続開始前に受けた贈与について、相続財産に加算する期間が3年から7年に延長 (2024年1月以降の贈与から適用) ・今後歴年贈与を検討する際は、「歴年贈与を開始する時点の年齢」を踏まえて 対応案を考えることが従来に増して重要に ・極力前倒しでの贈与開始が賢明。高齢から検討する場合は、孫へ贈与することも 有効な選択肢
なお、相続時精算課税贈与についても今回の税制改正で見直しがされていますので、同制度についても贈与を検討する際には併せて理解しておくことが重要です。詳しくは以下記事をご覧ください。